山田です。
民間の某日本語教師養成講座で単発で機会を頂き、
地域日本語教育と対話型活動について3時間の講座をしてきました。
前半は講義形式、後半は対話型の実践ワークショップです。

今回の講座では、対話がなぜ必要かということに気付いてもらうために、
PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)の問題分析&目的分析を
ワークショップの手法としてごく簡単に部分的に使いました。
前置きはいろいろと加えたのですが、
「地域社会が多文化共生になっていない」という中心問題を設定し、
その原因を4つのグループで話し合ってもらいました。
ごく簡単な例示のあと、
すぐに参加者同士の話し合いで付箋を使った分析に入ることができました。
短時間でできるものなのかという不安はあったのですが、
日本語教師養成講座の受講生さんたちだけあって、
このくらいの階層と広がりの図が20分程度でできました。

20130113_kouza01

どのグループも概ねコミュニケーションや話す機会が少ないといった内容が
樹形図の上位に来ました(写真を撮ればよかったです)。
そして、各グループできた図をグループ間で交換して、
素晴らしい考えだと思う内容の付箋に「★」、
よく分からないものに「?」をつけて教室全体で情報共有をしました。

次に目的分析に移り、問題分析で出た内容の表現を裏返して
理想の状態を表す表現に変えてもらいました。
書き換えた付箋を元のものの上に重ねて貼ってもらいました。
樹形図の一筋だけを例にとってみるとこんな感じです。

20130113_kouza02

すると先ほどは上方向へ「こうだからこうなっている」という関係だったものが、
「こうすればこうなる」という関係の図になります。
もっと具体的な内容まで掘り下げておけば、
教室に置き換えたときになにをすべきかのヒントになるはずです。

この作業を通して、
多文化共生社会の実現のためには
住民同士のコミュニケーションが必要だということが明確に分かり、
それを日本語教室でどう実践するのかという展開で
実際の対話型活動の概要説明と実践に入りました。

アイスブレイク(ペーパータワー)と対話テーマ2つ(疲れ/節約)の実演では、
楽しい場の共有と活発なおしゃべりが見られました。
対話活動後の振り返りでは、
一緒に話した人たちの何が分かったかを受講者に聞きました。
すると、家族構成や仕事、暮らし、考え方などが分かったという意見が出ました。
そういった個人レベルのことを日本人と外国人のお互いが知ることで
多文化共生は育まれていくのだということが分かってもらえたと思います。

講座は好評でしたが、
受講者の感想からは問題分析&目的分析のインパクトが強かったかなと思いました。
これ自体が参加型学習の手法で対話を生むものなので
学習者を交えていろいろなテーマでやってみるのもいいかもしれません。
どんぐりでは分析「なぜ日本語が上手にならないか」でやってみたことがあります。↓
http://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2012/05/12/94

質問もいろいろ出たのですが、
それは今後の投稿で振り返りとして小出しにしていこうと思います。

講座の準備はずいぶん前から着手してはいたのですが、
夜通しかけてスライドを完成させて一睡もせずに授業に臨みました。
前半から喉が枯れだしてフラフラでもあったのですが、
本当にやりがいがありました。
地域で、海外で、これから日本語教育に関わって活躍する人たちが
対話型の手法と考え方を
その場に合ったかたちで実践に取り入れていってほしいと願っています。