浜松市/グラフで見る外国人統計(2022年)

山田です。
浜松市や国が数値で公表している外国人の統計情報を
毎年、本ブログで視覚的に把握しやすいグラフや図にしています。
これは、市民に外国人の存在をもっと知ってもらいたいという思いと、
どこにどんな外国人がどれだけいて、
浜松市がその情報を考慮して外国人施策を進めているか
市民・外国人支援者に考えてもらいたいからです。

今後、市と県の統計情報を見ながら、
参加者で外国人の様子・必要な施策について考える講座も
開催する予定です。

統計情報は、基本的に2022年4月1日時点のもの中心にしていますが、
県や他の市との比較などの場合、調査日が2021年のものも使用しています。

■ 目次

■ 静岡県内で外国人が多い市町

(2021年1月の統計を使用しています。最新統計が出たら更新します)
浜松市がどれだけ外国人が多いのかを見るために、
静岡県内で外国人が多い市町を多い順に並べてみました。
浜松市は2位の静岡市の2倍以上と断トツの多さです。

ところが、各市町の全人口に占める外国人の割合で見ると、
浜松市はそれほど多くはなく、11位となっています。
この統計で上位に来るのは、日本人が比較的少ない市町のようです。

■ 外国人人口の変化

浜松市で外国人の人口がどう変化してきたかを見てみましょう。
外国人人口が急激に増えたのは、1990年6月の入管法改正施行からです。
これによりブラジルなどからの日系人の出稼ぎが始まりました。
グラフでは1990年3月末の値なので、法改正の施行前なのですが、
すでに増え始めていることがわかります。

棒グラフの色分けは、
浜松市が周辺市町と合併した前後の様子を表したものです。
合併前の周辺市町の外国人統計も公開されているので、
さかのぼって加えてあります(濃い黄色)。
浜松市などが作った多くのグラフは、合併前の周辺市町の分が入っていません
(2006年から急に値が跳ね上がっているグラフです)。

<参考>
「住民基本台帳による人口と世帯数」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/005_kubetsu.html

2008年に最も外国人が多くなってから、
リーマンショックの影響で日系人の帰国や転出が相次ぎました。
2015年に底を打ってからは再び増加してきたものの、
新型コロナウイルスの影響で、2020年から微減となっています。

リーマンショック以降の外国人人口の変化を、
2008年を100として、日本全体、静岡県全体、浜松市しで比べてみました。
ずいぶん違う推移のしかたをしているのが、わかります。
(このグラフは、最新統計(2021年12月分)が7月に出るので後日更新します)

<参考>
在留外国人統計(旧登録外国人統計)(各年6月・12月)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&bunya_l=02&tstat=000001018034&cycle=1&tclass1=000001060399&tclass2val=0

市の全人口に対して
外国人はどのくらいの割合なのかを見てみましょう。
外国人がもっとも多かった2008年に4%に達していたのが、
外国人人口の減少が底を打った2015年に2.59%まで落ち込み、
現在は約3%でほぼ横ばいが続いています。

外国人人口の割合は日本人の人口も影響するので、
日本人と外国人の両方で人口の変化を調べてみました。
浜松市では2009年が総人口のピークになっていて、
その後、日本人はずっと緩やかに減少が続いています。
この表では外国人も減ったことになっていますが、
2015年に底を打ってからは緩やかに増えています。

■ 各区の外国人人口

合併により広大になった浜松市は、
区ごとの人口に偏りがあるので、外国人人口も区ごとに調べてみました。
日本人もそうなのですが、外国人も中区に集中していることが、わかります。

<参考>
区別・町字別世帯数人口一覧表
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/005_kubetsu.html
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/3757/setaisu-jinkousu_area_r04-04.pdf

リーマンショック以降に
各区で外国人人口がどう変化したかを調べてみました。
中区や東区などの中心市街地は、
ブラジル人が大幅に減ったまま人口がほとんど回復していません。
一方、西区、浜北区、北区など市の中心から離れた地域では、
ほぼ元の水準まで人口が回復しています。
でも、再び増えているのはブラジル人ではない人たちです。

<参考>
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/3758/setaisu-jinkousu_area_h20-3.pdf
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/27951/setaisu-jinkousu_area_h27-04.pdf
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/3757/setaisu-jinkousu_area_r04-04.pdf

各区の外国人の多さをよりわかりやすくするために、
中区の外国人人口を100として、各区の割合を計算して、
地図に値と濃度で表してみました。

区ごとの人口に占める外国人の割合も同様に表してみました。
浜松市全体では3.14%ですが、
中区以上に南区が最も外国人の割合が多いことがわかります。

ちなみに、浜松市は2010年に外国人がそれほど多いわけではない西区に、
地域日本語教育の拠点として、
「浜松市外国人学習支援センター」(U-ToC:ユートック)を開設しました。
平日昼間に多くの日本語クラスを開催しています。

同センターは、駅バスターミナルからの距離が約9.5km、
その間にはショッピングセンターのイオンが2つあります。
JR東海道線では浜松駅から西へ2駅めの舞阪駅を降りて1km歩きます。

<参考>
浜松市外国人学習支援センターの近年の取り組みについては、
文化庁のウェブサイトにある文化審議会国語分科会、
2022年6月21日の日本語教育小委員会(第112回)の配布資料が参考になります。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/nihongo_112/93725301.html

資料4 ヒアリング資料②静岡県浜松市(PDF/6.5MB)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/nihongo/nihongo_112/pdf/93725301_04.pdf

■ 外国ルーツの子ども

浜松市外国人学習支援センターと、
浜松市内で外国人児童が多い学区の位置関係を地図にしてみました。
これは同センターができてしばらくたった2012年度の様子です。

学校に外国人の子どもが多いということは、
外国人が家族で多く暮らしている地域であるということです。
後述する子どもの日本語の問題は、様々な対策がなされていますが、
その親世代の日本語教育が大きく関わっているという分析が欠けています。

しかも、日本語教育といっても、ひらがな・漢字や単語、文法をおぼえたり、
会話の能力、できること(can-do)が増えればいいかといえば、
それだけでは問題は解決しません。もちろん、大事ではありますが。

それと同時に、外国人住民と日本人住民がお互いのことを知り、
人間関係をつくるための、広い意味での日本語教室が地域に必要です。

そのためには、そもそもの基本的なこととして、
地域の日本語教室は外国人・日本人がアクセスしやすい
日時・場所で開催されなくてはいけません。

浜松市はどう考えて地域日本語教育の拠点を郊外に設置したのでしょうか。
他の外国人集住都にそのようなところはあるでしょうか
(掛川市では日曜午後に市民がアクセスしやすい市役所で開催)。
しかも、浜松市外国人学習支援センターは、
多くの外国人労働者が通えない平日昼間に多くの教室を開催しています。
そのためのお金は、どこから入るお金でしょうか。

近年はオンラインや外部委託で外国人集住地区をカバーしていますが、
拠点のあり方は見直すべきです。

2012年と2022年で外国籍児童が多い学区の様子を比べてみました。
ここでは外国籍児童が30人以上在籍する小学校の学区を載せています。
点線の楕円はそういった学区が多数点在するところで、
子を持つ外国人家族が多く暮らす地域でもあります。

この10年のほどで、浜北区方面にも広がってきたことがわかります。
西区にある浜松市外国人学習支援センターとは
市の中心から全く違う方向です。

外国籍の児童生徒の人数がどう変化してきたかも、
かなり前からさかのぼってグラフにしてみました。
2008年までの児童生徒の増加の様子から、
外国人の家族での移住が急激に進んでいたことがわかります。

外国人全体の人口の変化と違って、
児童生徒の数はリーマンショック以降、
2008年頃を上回っている点も注目です。

児童生徒の国籍を見てみましょう。
大人も含めた外国人全体の国籍の割合と似ていますが、
ブラジルとペルーはそれよりも多くなっています。

子どもが日本と海外のどちらで生まれたかについても見てみましょう。
7割近くが日本生まれで、これは年々増加傾向にあるようです。
ただし、主要な国の中では、フィリピンだけが海外生まれの方が多いです。

外国籍の子どもで深刻なのが、日本語の問題です。
海外生まれの子が学齢期の途中で編入してくる場合に、
日本語で苦労するのは仕方ないことですが、
日本で生まれ育った子でも、日本語が十分でなく苦労すケースがあります。

下の折れ線グラフが示す通り、
外国人児童生徒の60%以上が日本語指導が必要というのは、驚きです。
海外生まれの子が約30%なので、
仮に、その子たちがみな日本語指導が必要だとして、
それに加えて日本生まれの子も、約30%が日本語指導が必要だということです。

親が日本社会・日本人とほとんど接点を持たずにいると、
日本で生まれ育っても、子の幼児期の日本語習得の機会が極めて少なく、
小学校入学でようやく日本語に触れることになる子がいます。
外国人学校から公立学校に編入する子も似た状況です。

その後、日常生活や友達との日本語会話は特に問題ないようになっても、
教科学習の内容理解のための日本語力は、また別なのです。
そこを鍛え、年齢相応に追いつくまでには相当な努力が必要になります。

見過ごしてしまいがちなのが、
日本国籍でも日本語が十分でない子もいるということです。
どういうことかというと、外国で生まれ育ったたけれど、
国際結婚など親の事情で来日し、
日本国籍を取得したケースなどです。
こういった子も含めて、
全国的に日本語指導が必要な子たちは増加傾向にあります
(ここ2〜3年はコロナの影響で来日がほぼなく、微減ですが)。

<参考>
「浜松市における 外国人児童生徒等の状況と 指導体制について」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/151/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2019/07/29/1419667_02.pdf

■ 国籍別の人口

国籍別人口の割合を見てみましょう。

リーマンショック以降の推移を積み重ねグラフで見てみると、
ブラジル人が減って全体も大幅に減り、
それからフィリピン人、ベトナム人が増えて、
全体の人口が再び増えてきた感じになっていますが、
もとの3万人には回復していません。
新型コロナウイルスの影響で2021年以降は微減になっています。

3つの年で国籍別人口の割合を比べてみました。
1990年4月は、入管法改正の直前なのですが、既にブラジル人が来日し始めています。
ということは、1989年以前はブラジル人がほとんどいなくて、
韓国人が半分以上を占めていたのだと思われます。

外国人がもっとも多かった2008年は、
ブラジル人が6割近くと圧倒的多数でしたが、
現在はそれが半数まで減って、
技能実習などのベトナム人、フィリピン人が増えて、
ブラジル人は4割近くにまで減っています。

浜松の外国人人口の変化で大きな変動があった
ブラジル人人口の変化を見てみましょう。
もっとも多かった2008年を100とした割合の変化で表してみました。
2013年ごろに半数ほどに落ち込んでから、ずっと横ばいが続いています。
ちなみに、同じ南米でもペルー人は3割減程度です。

人口数上位7カ国を1つのグラフにすると、
ブラジルだけ突出して他の国が見にくいので、
ブラジルを除いた6カ国で人口の変化をグラフにしてみました。
フィリピン、ベトナムの増加の様子がよくわかります。

国籍別人口を多い順に16位まで並べてみました。

■ 人口が増えているアジアの5カ国

少数派ではあるのですが、
2012年以降に浜松市で人口が増加している国があります。
だいたいアジアのベンガル湾の周りにある、
ネパール、タイ、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカの5カ国です。

この5カ国全体では、2012年から2021年までで
人口が2.27倍に増えています。

個別の国の増え方を見るために、折れ線グラフにしてみました。
在留資格でいうと、技能実習や留学の人たちだと思われます。

ネパールの人たちは、他にも技術・人文知識・国際業の在留資格で
インドカレー店などの調理師としても、多く来日しています。
浜松市内のインドカレー店の多さについては、こちらをご覧ください。
http://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2016/02/25/325

数値でも確かめてみましょう。

その他、増えてはいない少数派の国を5つ選んで、
人口変化のグラフにしてみました。
インドは他のどの国とも違う推移のしかたをしています。
他は、横ばいか緩やかな減少が続いています。

<参考>
「令和3年 浜松市の人口」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/008_r03_hamamatsushinojinkou.html
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/documents/136099/r03_kokusekibetu.pdf

■ 在留資格別の人口

在留資格については他の市と比較できる12月の統計を使いました。

身分・地位に基づく4つの在留資格について、
浜松市と他の市と比較してみました。

<参考>
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&tstat=000001018034&cycle=1&tclass1=000001060399&tclass2val=0

■ 年齢別の人口

日本人と外国人でいわゆる人口ピラミッッドを作ってみました。
少子高齢化の日本、働く若い世代が極端に多い外国人と
形は大きく異なります。

おおまかに3つの世代に分けた割合を見ると、
外国人は元気に働ける20〜64歳の世代が非常に多く、
高齢者が極めて少ないのがわかります。

人口ピラミッドを日本人と外国人を一緒にしてみました。
こう見ると外国人は少ないと思うかもしれませんが、
働く世代がいてくれることで、
税金や社会保障のお金が日本に入ってきていて、
日本社会を支えていることを忘れてはいけません。

3つの年代で外国人割合がどうなっているか見てみましょう。
全年齢では3.17%なのですが、働く年代では4.45%と多く、
高齢者が0.52%と極端に少ないのがわかります。

外国人がもっとも多かった2008年と最新2021年で、
外国人の年齢別人口の構成がどう変わったかを見てみましょう。
男女差がよりわかりやすくなるように、
人口ピラミッドを2つに折って90度寝かせてみました。

20代男性が多いのは、90年代の入管法改正以降ずっとそうでしょう。
2021年のグラフで30代後半から50代前半の女性が多いのは、
国際結婚で日本人と結婚した人たちが多かったからだと思われます。

2008年と2021年の外国人人口の割合を、
3つの年代で比べてみると、大差はないように見えますが、
65歳以上の割合が増えてます。

そこで各年の65歳以上の外国人人口の変化を調べてみました。
2008年から2021年までで1.8倍に増えています。
静岡県全体では外国人で高齢者が最も多いのは
韓国人(特に特別永住者の)なのですが、
浜松市は韓国人が多くないので、
県で高齢者が2番目に多いブラジル人の高齢者が多いのだと思います。
1990年代の移住の始まりから30年以上が経ち、永住者になる人も増えました。
高齢化はこれからも進むのでしょう。

<参考>
「令和3年 浜松市の人口」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/008_r03_hamamatsushinojinkou.html

「平成20年 浜松市の人口」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/008_h20_hamamatsushinojinkou.html

■ グラフ作成で工夫したポイント

  • グラフはMacのプレゼンアプリ Keynote で作成し、
    画像1枚が講座などで使用するスライド1コマにも
    そのまま使えるようにした
  • グラフ画像は拡大したときにそこそこ綺麗に見えるように、
    1024×576 pixel にした
  • グラフ画像は、ブログ記事中では480×270 pixelで、
    クリックで拡大できるようにした
  • 画像はSVG形式にするかも検討したが、
    フォントが埋め込めないので、PNG形式にした
  • 画像の背景は、白ではなくベージュ、
    文字は濃い茶色にして、明暗差を緩和
  • グラフには Keynote では実現できないことが多数あったので、
    レイヤー機能を使って手作業でオブジェクトを追加
    例:積み重ねグラフの合計が表示できない
      グラフの項目名に振り仮名が振れない
      x軸、y軸の数値に「5千、1万」などの漢字が使えない 
  • フォントは読みやすく、やさしい印象を与える
    ヒラギノUD丸ゴ」を使用
  • タイトルや大きい項目名には、
    外国人も読めるように振り仮名を振った
  • 棒グラフなどの色は、落ち着いた色調の5〜9色を使用
  • 地図の塗り分けは、「白地図ぬりぬり」を使用
    https://n.freemap.jp
    使い方は本ブログの次の記事で紹介↓
    https://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2022/07/12/5958
  • グラフのあとに、参考にした統計情報のURLリンクを配置

■ もくじ