静岡県/外国人人口などの統計(2021年)/クロス集計で詳しく分析

政府統計の総合窓口「e-Stat」が
都道府県レベルでクロス集計できる外国人統計情報を
公開するようになったので、
静岡県内の在住外国人の状況を、
わかりやすい図・グラフにしてみました。

県内には、どんな目的でどこから来た外国人が
どれだけいるのかを、多くの方に知ってもらいたいです。
その外国人の多くは、
これまでも同じ県民として
身近に暮らしてきたかもしれないし、
これからも同じ県民として
身近に暮らしていくかもしれません。
知らないところで、
お世話になっていた/いる/なるかもしれませんよ。

日本語教育や学習支援などで
外国人と関わりのある人たちは、
いろいろと話し合う材料になると思います。
活用してもらいたいです。

※タイトルは「2021」とありますが、
 これは2021年度中に公開されたデータで、
 実際の調査日は2020年12月のものが多いです。

▼ 目次

▼ 外国人が多い都道府県

日本全体で見ると、東京都が突出して多い56万人で、
静岡県は8番目の約10万人です。

▼ 静岡県内で外国人が多い市町

静岡県内では、浜松市が圧倒的な多さで2.6万人です。
浜松市の統計情報は、
別ページに作ったのでそちらもご覧ください。↓
https://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2021/07/11/3984

市町ごとにもう少し直感的に
外国人の多さがわかる地図を作ってみました。
最も外国人が多い浜松市の外国人人口を100としたときの、
他の市町の割合を数値、色の濃さで表してみた地図と、
浜松市中区を100として市・区・町単位で表した地図です。
割合が1に満たない市町(地図中で数字なし)でも、
わずかながら外国人はいます。

伊豆半島の中央部に位置する伊豆市は、
この地図でも外国人が少ない地域であることがわかりますが、
2021年度の文化庁の、
地域日本語教育スタートアッププログラム」に採択されています。
同プログラムは、日本語教育の空白地域となっているところに、
日本語教室を設置・開設するための支援を行うものです。

次に、各市町の全人口に占める
外国人の割合(%)を比べてみました。
各市町で100人中の何人が外国人かを表したものです。
日本人がそれほど多くない市町では、
必然的に外国人の割合が高くなるようです。
外国人が最も多い浜松市は日本人も多いので、
3.19%と割合は多くありません。

静岡県では、2020年度から毎年2市町ほどを選び、
対話交流型のモデル日本語教室を開催しています。
2020年度は、菊川市、磐田市が、
2021年度は、袋井市、牧之原市が選ばれています。
これらの市は、下のグラフで外国人割合が特に多いところなので、
日本人・外国人市民の交流にも特に力を入れたいのだと思います。

▼ 人口推移

外国人人口がどのように推移してきたか見てみましょう。
(※2011年までは外国人登録者数に基づいた人数で、
  2012年からは住民基本台帳に基づいた人数)

静岡県ではリーマンショックによる景気後退で
外国人人口が大幅に減りましたが、
ようやくリーマンショック前の人口に戻りつつあります。
しかし、その内訳(国籍・在留資格)は、大分変わってきています。

ちなみに、この推移の仕方を全国と比べると
どうなるでしょうか。それがの次のグラフです。
日本全体では、2008年と比べて1.3倍になっています。

▼ 国籍

県内に在留する外国人の国籍を大まかな地域で分けてみました。
アジアと南米だけで全体のほとんどが占められています。
北米やヨーロッパの人は、ごくわずかです。

アジアと南米それぞれに絞って、
上位8カ国を見てみましょう。
人数の多いアジアは29カ国と多国籍で、
それぞれの国は公用語が異なります。
近年、技能実習や留学でこれらの国から来日する人たちが増えています。
一方、南米は、10カ国だけで、しかもブラジル1国が圧倒的多数です。
南米各国の公用語は、ブラジルがポルトガル語で、
それ以外の国はほぼスペイン語圏です。

改めて在留外国人の国籍を、地域を問わず上位12カ国並べてみました。

上位8カ国の割合を見てみます。

日本全体との比較もしてみましょう。随分違っているのがわかります。

▼ 在留資格

在留資格別の割合は、
県全体では永住者と定住者を合わせた割合が全体の半数以上です。
日本全国の割合と比べてもこれらの割合が多いことがわかります。

在留人口が多い1〜8位の国で、
それぞれの在留資格の割合を調べてみました。

次に、特定の在留資格の割合が多い国ごとに、
在留資格の割合を比較してみました。

近年、県内でイスラム教徒かなという人が増えているので、
イスラム教徒が多い4カ国の在留資格を調べてみました。
インドネシアはちょっと違うのですが、
他の3カ国は家族滞在が多めです。

家族滞在で20歳以上の性別の比率を比べると、
男性1に対して女性が3〜10ぐらいで、
30代女性が多いので奥さんでしょう。
家族滞在では資格外活動許可を得ても
週28時間以内の労働しかできないので、
仕事の中で自然に日本語を覚えるのは難しいかもしれません。

主な在留資格ごとの人数の推移を見てみましょう。
2008年よりあとは全体としては外国人人口はしばらく減るのですが、
永住者は定住者を上回って概ね緩やかに増加し続けています。

ここからは、主な在留資格ごとに詳しい人数の推移と、
現在の国籍の内訳をそれぞれ見てみましょう。

まずは、「永住者」です。ブラジルやフィリピンの日系人が多いです。
日系人は、最初は定住者として来日しますが、
継続して5年以上日本に滞在し続けている等の条件を満たすことで、
更新手続きが不要な永住者に切り替えることができます。

「定住者」も、ブラジルやフィリピンの日系人が多いですが、
リーマンショック後には急激に減少しました。
これには、政府の「日系人離職者に対する帰国支援事業」も
影響していそうですが、
同事業を利用して静岡県から帰国した外国人は、
4,641 人だったそうです(→資料PDF)。
同事業を利用せず帰国した人や、永住に切り替えたり、
仕事を求めて他県へ転出したりした人もいたかと思います。

「技能実習」は、
最も人口の変化が大きかった在留資格です。
ベトナム人の急増は、
この技能実習の受け入れ増加と一致しています。

技能実習生というと、
企業側の法令違反が後を絶ちませんが、
こちらの記事で、公開されている違反企業の情報を
地図にしたサイトを紹介しています。
静岡県内の状況も確認してみてください。
https://tabunkadonguri.wordpress.com/2021/04/03/3764/

「日本人の配偶者等」は、
日系ブラジル人を除くとアジアの女性が多いです。
リーマンショック前から減少傾向がありました。
在留資格「興行」による入国審査が
2005年以降に厳格化したため、
フィリピン等からの女性の入国が減り、
全国では国際結婚の件数も
2006年をピークに2013年まで急激に減っています。

静岡県の日本人の配偶者等もそれと似た減少の仕方になっています。
日本人と結婚したのち何年かして、帰化する人もいます
(全国の帰化許可者数等はこちら→法務省のページ)。
全国での帰化許可者数は、2003年がピークで、
その後も2010年ぐらいまで多い状態が続きました。

また、帰化の申請は中国・韓国の人が多いのですが、
帰化よりも多いのは、永住者へ
切り替えるケースではと思われます。
他にも、離婚した場合に引き続き在留を希望し、
定住者など他の在留資格に切り換える人もいます。

「留学」は、
政府の「留学生30万人計画」の達成に向けて、
アジアからの学生が大幅に増えました。
「就学」と「留学」が統合されたので、
教育機関の区別がわからなくなりましたが、
近年は、大学などの高等教育機関の
留学生(特に中国人・韓国人)は減り、
日本語学校や専門学校などで学ぶ
東南アジアの留学生が増えているようです。

「技術・人文知識・国際業務」は、
日系人以外の外国人が
日本で働くために取得するケースが多い在留資格ですが、
2008年比で3倍近く増加しています。
これは、増加してきた留学生が
卒業後に日本で就職するようになったからではと思われます。
(留学生の国籍ともだいたい同じで、
 東アジア・東南アジアが多い)

主な在留資格の割合について、
県全体と、7市町を選んで割合を比較してみました。
工場の数、日本語学校や専門学校、大学などの数、
技能実習生の受け入れ企業の数などによって、
各市町でもかなり割合が違っています。

在留資格のうち、
「身分又は地位に基づく在留資格」(以下、身分資格)と
呼ばれているいうものがあります。
「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」
「永住者の配偶者等」の4つです。

これら身分資格の人たちは、
概ね長く日本に暮らす人たちです。
これらの在留資格の人たちが、
県内の市町でどのような割合でいるかを調べてみました。
県の西ほどこの身分資格の割合が多いのですが、
静岡市や東部や伊豆では身分資格は少ないながらも、
その中での永住者の割合は多く
定住者がとても少なくなっています。

▼ 年齢別人口割合(人口ピラミッド)

人口ピラミッドで、外国人の年齢分布を見てみましょう。
まずは、県内の外国人全体です。
働らくために来日する人が多いので、
20歳から急激に多くなっています。
男女共に20代がピークですが、
男性の方が際立って多いです。
逆に、女性は30〜30代で
男性以上に多い割合になっていて、非対称です。

県内の日本人とも比較したかったのですが、
同じ時期の日本人統計を探しているところです。

ここからは、クロス集計でもっと絞り込んでいきます。
静岡県ではブラジル人が多く、
そのほとんどは永住者と定住者なので、
その2つのグループで比較してみました。

「ブラジル人定住者」の方は、男性側に偏りがありますが、
「ブラジル人永住者」は男女の偏りが少なくなっています。
また、永住者の方がピーク年齢が高く50代前半で
、定住者は30代後半です。

65歳以上の高齢者は、永住者の方には少なからずいますが、
定住者にはほとんどいません。
定住者は長年過ごすと永住者に切り替えるからでしょう。

在留資格で伸びが著しい
「技能実習」の人たちについても、調べてみました。
ついでに、2019年からの新しい在留資格「特定技能」も
一緒に載せています。

技能実習は、20代、特に20代前半の若者がピークです。
家族帯同ができない資格ですが、
子育てしやすい世代が多いことも考えて、
制度を見直してもらいたいものです。

「留学」の人たちについても調べてみました。
留学先は日本語学校、専門学校、大学などが
ありますが、20代前半がピークです。

卒業後は、日本で働きたい人が多いでしょうから、
留学生が卒業後に就職で切り替えることが多い
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の年齢も調べてみました。

留学と比べて1段上の20代後半がピークになっています。
しかし、女性は男性の半数ほどです。

また、留学生が多い20代前半の国籍上位8カ国と、
技術・人文知識・国際業務が多い
20代後半の国籍上位8カ国の人数を調べてみました。
やはり、だいたい同じ国籍であることがわかります。

ちなみに、「技術・人文…」の資格で長年日本で暮らして、
「永住者」に切り替えていく人もいるでしょう
(就労の制限がないから)。
「永住者」はもっと多様化していくのかもしれません。

在留資格「日本人の配偶者等」について、
同資格が多い3カ国の女性に絞って年齢を調べてみました。
ちなみに、帰化する人や、
永住者・定住者に切り替える人もいるので、
妻がずっとこの資格でいつづけるとは限りません。
(この資格は妻だけではなく、
 特別養子、または日本人の子として出生した者も含みます)
それにしても、ブラジル人のピークが50代前半なのはなぜでしょう。

▼ 元にした統計情報

政府統計の総合窓口「e-Stat」
2012年からの住民基本台帳上の外国人数
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&bunya_l=02&tstat=000001018034&cycle=1&tclass1=000001060399&result_back=1&tclass2val=0

政府統計の総合窓口「e-Stat」
2011年までの外国人登録法に基づく外国人登録者数
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&bunya_l=02&tstat=000001018034&cycle=7&month=0&tclass1=000001060436&cycle_facet=tclass1%3Acycle&tclass2val=0

▼ 静岡県公式サイトの統計情報

静岡県公式ホームページ「ふじのくに」の中に、
「統計センターしずおか」というページがあり、
さらにそこから
「外国人の住民基本台帳人口調査」というページへ進むと、
統計情報のExcelファイルをダウンロードすることが
できるページにたどり着きます。
https://toukei.pref.shizuoka.jp/chosa/02-050/index.html

しかし、県のページは情報の更新が遅いのが残念です。
どんぐりのこの投稿は2020年末のデータを参考にしているのに、
県ではそのときに2018年末分までのデータしかありませんでした。
遅いというか、止まっているのでしょうか。

また、県では子どもにもわかりやすいように
国籍別割合や人口の推移をグラフにしたページも作っています。
「グラーフ博士のとうけい工場」というサイトで、
「国際」という項目を選ぶと、外国人統計を見ることができるのですが、
ここも2018年末のデータが最新ということになっていました。
https://toukei.pref.shizuoka.jp/kids/graph/kokusai.html

もう少し頑張ってほしいものです。

▼ データ整理に使ったソフトウエア

政府統計の総合窓口「e-Stat」で、
2020年末の外国人の統計から、
クロス集計できるデータが公開されるようになりました。

しかし、私が使っている
表計算ソフトウエア「Excel 2008 for Mac」では、
どうも使い勝手が悪かったので、
元データを、データベースソフトウエア「FileMaker」に流し込み、
データ整理に活用しています。

元のExcelファイルは、36万件のレコードがあり、
11.9MBのファイルサイズでしたが、
FileMakerに流し込んだら、80MBに膨らんでしまいました。
そこで、国籍や在留資格などを
テーブルで分けてリレーションを組んだうえで
最適化保存をしたら、24MBに減量できました。
更に、静岡県以外のレコードを削除したところ、
たったの1.7MB(レコードは約1万件)にすることができました。
無料のiPhone用アプリ「FileMaker Go」で利用しやすいように
レイアウトを工夫してアプリ化してみようかなと考えています。

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