浜松市/少数派ながら急増中の国々(2020年)

山田です。
今回は、浜松市に暮らす外国人のうち、
少数派ではあるものの
急増している国の人たちについて見ていきます。
5年、10年後の浜松は、
多国籍化・多文化化が一層進んでいるかもしれません。

▼ 人口8位以下の国々

まず、「少数派ながら増加中」という国々を絞り込んでいきます。
2019年10月1日時点で人口の多さが8位以下の10カ国を並べて、
少数派の国々の人口が増え始める2012年からの7年間で
人口が減った国や不明の国を除外します。

残った7カ国の人口推移を外国人が最も多かった2008年から見ると、
このようなグラフになります。

こう見ると、インドだけが他と違う動きになっています。
2011〜12年当時の地域の日本語教室の様子からしか分かりませんが、
自動車関連企業のインド人技術者とその奥さんたちが、
急に増えたのを覚えています。

一部の企業(といっても浜松の大企業とその関連)の動きでもありそうなので、
ひとまずインドは外して考えてみます。
残ったのは、ネパール、タイ、バングラデシュ、
マレーシア、ミャンマー、スリランカの6カ国です。

積み重ねの棒グラフにすると、
この6カ国全体では2012年で底を打ってからは、
ずっと増加をしているのがわかります。

ミャンマーの数値は、
2008〜2009年で0だったのか「その他扱い」だったのか分かりませんでした。
それが仮に0だったとすると、
浜松市におけるこの6カ国の人口は、2008年から2020年現在は1.5倍、
底を打った2012年から2020年現在は2.0倍に増加しています。
南米系の人たちの推移とは全く違います。

▼ 地図で確認

この6カ国を地図でも確認してみましょう。
だいたいベンガル湾に面した国やその周辺の国です。

▼ 在留資格

これらの人たちの在留資格も気になりますが、
国籍ごとの在留資格がわかる資料は、市のサイトで見つかりませんでした。

近年、急増している在留資格は「技能実習」と「留学」ですが、
留学生については、日本語教育振興協会の公開情報から
浜松市内の2つの日本語学校の学生の国籍・人数を調べることができます。
今回注目している6カ国の中では、ネパールとスリランカの人が、
多いとは言えないものの、この2校の日本語学校で学んでいますね。

・浜松日本語学院:https://www.nisshinkyo.org/search/college.php?lng=1&id=463
・湘南日本語学園浜松校:https://www.nisshinkyo.org/search/college.php?lng=1&id=511

報告書などで見つかる浜松市の在留資格だけの資料では、
2019年11月1日時点で技能実習が2,752人で、留学852人で、
単純な比にすると「技能実習3.2:留学1」ぐらいになります。
先ほどの2つの日本語学校の学生の国籍内訳からも考えると、
この6カ国については技能実習が多いのだと思われます。

▼ ネパール人が働くカレー屋の増加

浜松市内には、ネパール人が働くインド・カレー屋(?)がたくさんあります。
外国料理の調理師は、「技能」という在留資格を取得して日本で働くことができます。
こういった人たちもいるわけです。
カレー屋さんの地図は過去にこちらの記事で書きました。ぜひご覧ください。
外国人が働くカレー&ナンの店の数がすごいことに@浜松市
http://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2016/02/25/325

▼ 6カ国の公用語

今回取り上げた6カ国の人たちの国の公用語について見てみましょう。
公用語とは、その国の公的な機関で使われる言語です。
6カ国はそれぞれが異なる公用語を使用しています。
それぞれの言語は言語の系統・語族も違うので、
国境付近でよほど頻繁に接触がある人でない限り
お互いの言語では通じないでしょう。
浜松では、ブラジルのポルトガル語で
なんとかペルー人にも通じることが多いですが、
そういったことがこの6カ国間では無理かもしれません。
生まれ育った地域の言語は公用語とも違い、更に複雑に分かれるでしょう。

文字についても見てみると、
マレーシア語以外はラテン文字ではない独特な文字を使います
(これらの独特な文字は、形は違っても同じ文字から派生したブラーフミー系文字です)。

▼ 言語保障

地域のボランティア日本語教室には、技能実習生が多くいます。
技能実習生は、日本語を学ぶ環境を企業に与えてもらっているでしょうか。
日本語教育を受ける機会があり、仕事や日常生活には困らないとしても、
緊急時の生の日本語に対応できるでしょうか。
技能実習生は最長でも5年で帰国するとはいえ、
その間に何が起きるかは分かりません。

母語対応は少数派の言語では通訳できる人材が少ないでしょう。
そうなると、機械翻訳に頼ることが多くなります。
少数派の言語の翻訳精度は、どうしても低くなりがちです。
また、元の日本語を作る人たちは、
曖昧だったり違う解釈ができる文になったりしないように気をつける必要があり、
慣れていないと思わぬ誤解を与えてしまうことがあります。

それぞれの国での英語教育のレベルも気になります。
英語が準公用語的な地位にあるマレーシアを除くと、
英語による情報伝達・コミュニケーションはどこまで期待できるでしょうか。
これは日本人にも言えることです。

留学生は、将来日本で就職する人も多いでしょう。
就職して生活が安定したら母国の家族を呼び寄せる人もいるでしょう。
そうなると、家族の日本語が問題になります。
日本で子どもが生まれてからも、
数年単位で母国と日本の間を行ったり来たりする家庭もあるでしょう。
場合によっては、子どもの日本語習得がうまくいかず、
日本の学校の勉強が遅れてしまうケースもあります。
(私は今、そういうアジア・ルーツの子の学習支援をしています)

総合的に考えると、母語対応は努力するとしても限界があるので、
大人も子どもも日本語教育の機会をしっかり保障することと、
それが前提で「やさしい日本語」での対応も益々重要になってくるでしょう。

今、多数派の国の人たちの受け入れでも、うまくいっているとは言えません。
そこに更に多様な国の人たちを受け入れるということは、
日本社会には相当な責任が伴います。
5年、10年先を見据えた対応は、今からでもしておかなければなりません。

参考:令和元年 浜松市の人口>第7表:国籍別外国人数(2019年10月1日)
浜松市ホーム > 市政情報 > 統計 > 統計情報 > 人口・世帯 > 浜松市の人口
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/008_r01_hamamatsushinojinkou.html
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/1_jinkou-setai/documents/r01_kokusekibetu.xls


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浜松市内の7つの行政区ごとの様子はどうなっているでしょうか。
そして、それに対して市の委託による日本語教室が
どうなっているのか見てみましょう。
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https://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2020/09/19/2823

浜松市の区ごとの外国人人口と日本語教室の場所

<もくじ>

・その0…はじめに
・その1…外国人人口の推移
・その2…国籍別に見た人口と割合の変化
・その3…外国人の人口ピラミッド(年齢別人口構成)
・その4…少数派ながら急増中の国々 (このページ)
・その5…行政区ごとの外国人人口と日本語教室の場所