浜松市「防災ホッとメール」の誤訳問題(台風19号関連)は、日本語についてもっと考えるきっかけにすべき

山田です。
2019年10月12日の台風19号接近に伴い、
浜松市では河川の増水により避難勧告が出されました。

浜松市では「防災ホッとメール」というしくみで、
登録した人には日本語だけでなく英語とポルトガル語でも
緊急情報などが受け取れるようになっています。
今回は、そのポルトガル語の「誤訳」がニュースになりました。
台風接近は土曜の夕方で、ポルトガル語に詳しい職員がおらず、
自動翻訳の誤った訳で配信してしまったということです。

オリジナルのメール文はこちらです。↓
https://service.sugumail.com/bosai-hotmail-hamamatsu/member/portals/detail_mail/2650283

問題の誤訳はこちらで、
“Foi emitido aviso para se refugiar proximidades do rio Takatuka.”
これだと、(危険度が増した)高塚川周辺へ避難することを
指示する意味になってしまうそうです。

正しくは、このようなポルトガル語で配信すべきだったようです。
“Foi emitido a alerta de refugio nas proximidades do Takatsuka.”

もし、自動翻訳にかける前のオリジナルの日本語文が、
「高塚川周辺に避難するように勧告が出ました。」だとすると、
区切り方次第で日本語としても2つの解釈が生じます。

A:(高塚川周辺に)(避難するように 勧告が出ました)。→高塚川周辺から他へ避難
B:(高塚川周辺に避難するように 勧告が)(出ました)。→高塚川周辺へ避難

母語話者によるチェック体制はもちろんとして、
「自動翻訳は万能ではない」という意識を持つべきで、
捉え方によっては違う解釈になる文(=多義文)もあるので、
翻訳前の元の文でも誤解を生じないか、よく考える必要があります。
また、実質的に「指示」であれば、「勧告が出た」などとするよりも、
「〜へ逃げてください」とした方が分かりやすく、行動を促せるはずです。

ちなみに、外国語によるメール内に併記された「日本語版」は
分かち書きで(スペースで文節が区切られていて)、
少し振り仮名と言い換えが付いていましたが、
別件の配信メールには、「やさしい日本語」と書いてあるのに、
分かち書きではなく、語彙も表現も難しいものもありました。
振り仮名は語の後ろにカッコ( )でありますが、
あまり( )が多いと、日本人でも読みにくいです。
他の地自体でもよく見かける方式ですが、
それならば、漢字の使用量を減らした方がずっと読みやすいはずです。

今回の件で、誤訳によって更なる被害がなかったのはよかったですが、
これを機に、訳の問題だけでなく、
分かりやすい・伝わりやすい日本語に関心が向けられたらと思います。