山田です。
この日は某市で日本語ボランティア向けの勉強会に参加してきました。
今回はベトナム語の発音指導がテーマでした。

全国的にベトナムからの技能実習生が増え続けていますが、
ベトナム人学習者は母語と日本語との発音の違いが大きいため、
発音の習得は大変苦労します。
当然、教える側も苦労するわけで、
今回はその指導のポイントが聞けると期待して参加した人が多かったのでしょう。
定員50名の会場はほぼ満席の状態でした。
私も、浜松から原付で1時間、在来線と新幹線で30分、
徒歩で20分かけてワクワクしながら会場をめざしました。

しかし、内容としては参加者の期待に応えるものではなかったと思います。
否定的なことは書きたくはないのですが、
これは…という点が3つあったので、書き留めておこうと思います。

(1)不自然な発音に対して何がどう違っていて、
   学習者が目標の発音をイメージできるようにするために
   どんな方法があるのか、そこがほとんど聞けませんでした。
   発音の誤りは「╳」と示されただけでは、試行錯誤のしようがありません。

(2)参加者の関心が最も高かったと思われる具体的な発音の直し方、
   特に「つ」が「ちゅ」になってしまうことの指導法について
   ほとんど聞けませんでした(質問でやっと出てきたが時間切れ)。
   最初からこれに30分かけてもよかったのではと思います。

(3)日本語の音を子音+母音の1拍ずつに分けても自然な発音にはなりません。
   日本語では2拍をリズムの基本単位とする指導法があり、
   母音の長短や促音に相当するものがない言語の母語話者に有効です。
   その説明が全くなかったのは残念です。

これら3つについては、
すべて、国際交流基金の日本語教授法シリーズ2「音声を教える」に載っています。
https://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_rsorcs/o_book04.html#k02
このシリーズは海外の日本語教師のために作られたものなので、
振り仮名も多く内容もとてもわかりやすくなっています。
日本語ボランティア向けにもちょうどいいのではと思います。

上記の(1)〜(3)については、以下のページが参考になります。

(1)について:p.140の発音と発音以外の誤用のフィードバックの違い
(2)について:p.24〜の「「ツ」が「チュ」になってしまう場合」
(3)について:p.75〜の「日本語のリズムと2拍フット」

ちなみに、(1)について、
p.145では「◯」や「╳」の札でのフィードバックによる試行錯誤も
河野・小川原(2006)の話として紹介していますが、
「教師が知識や練習方法を積極的に与えることによって、
 学習者が「試行錯誤」よりも効率的に、
 手がかりやヒントとできる可能性も考えられるでしょう」ともあります。

いろいろな考え方・方法があるにしても、押さえるべき最低限のことはあります。
それを踏まえて、実践してきた効果的で楽しい指導方法を知りたかったです。