山田です。
この日は掛川国際交流センター主催の
日本語ボランティア講座で講師を担当してきました。

掛川国際交流センターが主催する日本語教室は、
毎週日曜日午後に、二部構成で開催しいて、
前半は有志の市民ボランティアも
識字などで支援に参加しています(後半が専任講師による教室)。
市民参加は多文化共生をめざす地域日本語教育にとって大事なことです。
今回の講座は、これから新規でやってみようという方々や、
これまでやってこられた方々が参加するということでした。
そこで、どのような心構えで参加するとよいのかを
市民の方々が主体的に考えられるようにアレンジしてみました。

参加者は20人近く、3つのグループに分かれてのワークショップです。

<講座の構成>
第1部:言葉に興味を持ってもらうための言語学的なネタ
第2部:問題分析・目的分析で地域課題と解決策を確認
第3部:支援に活かすやさしい日本語について

第1部:言葉の不思議に触れる

言語には不思議で面白い面がたくさんあります。
そういったことを活用して、
ちょっとしたクイズのようなものにしてみました。
そこから文化の多様性・等価性を考えてほしいという大事な狙いです。

第2部:地域の問題を探る

課題解決のための企画立案・運営手法に
PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)というものがあります。
そのステップの一部の手法「目的分析/問題分析」を利用しました。
中心問題を見つけるのは時間がかかるので、
「日本での滞在年数が長いのに日本語が十分話せない」を
中心問題として設定しました。

まず、そこから引き起こる問題をグループで話しあってもらいました。
付せんと模造紙を使って中心問題から上へ展開する樹形図の作成です。
子ども支援など様々な立場の方が経験を持ち寄ることができました。
20160508_kakegawa01

次に、中心問題の原因を探り、下へ展開する樹形図の作成です。
ロジカルに考えないと原因と結果を結びつけられません。
試行錯誤でさまざまな原因を考えてもらいました。
概ね想定していた内容が出てきました。
20160508_kakegawa02

問題分析で出た表現は「良くない状況」を表す文です。
これを逆の「良い状況」の表現に書き換えてもらいました。
すると、できあがった樹形図を下からたどると
「こうすればこうなる」の連鎖を表す図に大変身します。
これがこの活動のあっと驚くところで、
ここが十分に理解してもらえて良かったです。

目的分析の樹形図の末端は解決策・対策ということになります。
20160508_kakegawa03

市民ボランティアにできそうなこと、
市民ボランティアだからこそできること、
ごく簡単な心がけや態度でも良いということで
改めて確認してもらいました。

日本人と外国人のコミュニケーション、普段からの声かけ、相互理解、
そういったキーワードが出ました。
では、そのために何が必要かということで、
第3部の「やさしい日本語」につながることができました。

第3部:やさしい日本語

やさしい日本語が生まれた経緯と、他地域の取組みを紹介しました。
時間が押していたのですが、
第2部でグループ活動に大幅な時間を使ったので、
第3部はどちらかというと講義に重きを置きました。
重要なキーワードは私が直接お会いしたり、
講演を何度も聞いた数名の研究者の考えを紹介し、
広報でのやさしい日本語と会話のやさしい日本語を分けて、
特徴を比較しました。
特に会話に関する他地域の取組み事例として、
山形県国際交流協会のラジオ番組と会話集の冊子、
Vivaおかざき!!の日本語教室を紹介しました。

それと、どんぐりで2013年度に、
横内美保子先生に担当して頂いたやさしい日本語講座の様子も、
手順と模造紙にまとめた結果などを見せながら紹介しました。
http://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2014/03/09/236

このときの内容は横内先生の論文として、
南山大学国際教育センターの紀要に載っています。
http://office.nanzan-u.ac.jp/cie/gaiyo/kiyo/kiyo_15.html

やさしい日本語は弘前大学の研究グループが紹介している
12の規則を簡単に紹介し、
実践として、防災関連の広報内容を
身近な外国人に口頭で伝えることを想定して
やさしい日本語に変換する作業をしてもらいました。
ここまでで講座終了です。


ふり返り

あとで参加者の感想をざっと読ませて頂きました。
直接、参加者とお話しした内容も合せると、概ねこういったことでした。

  • ワークショップ形式でみんなの考えを聞くことができた。
  • みんなの意見に共通する部分が多いことが確認できた。
  • PCM手法を初めて知って勉強になった。
  • やさしい日本語には工夫が必要と感じた。

特にワークショップの良さを実感してもらえたのが私は嬉しかったです。
そうです。みなさんが主体で良いアイデアを共有できるんです。

講座内容の構成として自分で振り返ると、
地域の問題分析からやさしい日本語へ結びつけたのは、
初めてだったのですが、上手くつながりました。
時間配分の失敗はあったのですが、
時間オーバーさせずになんとかまとめました(過去の教訓)。

ちなみに、私が掛川の教室で講師を務めたのは、2001年5月からの2年間でした。
ちょうど15年ぶりに、しかも当時と同じ教室で教壇に立たせて頂き、
感慨深いものがありました。
これからも掛川の教室を応援していきたいです。