キューバアジアの家日本語教室 Vol.6/ダリオさんの漢字クラス

¡Hola! キューバの近藤です。
アジアの家日本語教室で、私が担当するクラスでは
「文字」を教えることをしていません。

ひらがなやカタカナの使い方、
日本語の文字とはなんぞや、という話を
チラッとすることはありますが、
授業の中でそれ以上時間を割くことも
宿題で書き取りさせることもせずに、
文字は各自のできる範囲で自習してもらうようにしています。

日本語の文字習得の難しさは誰もが知るところですが、
せっかく日本語を学ぼうと思っているのに
文字のせいで嫌悪感を抱いてしまって
先に進めないのは残念だなというのもあり、
強要することなく文字習得の必然性を感じて
自ら勉強したくなるほど日本語って面白いと
思ってもらえたらいいな、と。

なーんて、本当は
「単に文字をどうやって教えていいやら分からない」
だけなんですけど・・・
最近、そんな私の救世主となる生徒が出現しました。

その名は、ダリオさん!

彼はインターネットのサイトや
スマホのアプリなどを使って独学で日本語を勉強し、
かなりの知識を持ってから私のクラスにやってきました。

話してみると語彙もなかなか豊富なのですが、
口語ではあまり使わないガチガチの熟語を多用する
「漢字好き」学習者にありがちな傾向が見られました。

予想した通り、漢字に対する情熱はただならぬものがあり、
初回の参加から授業終了後に
ボロボロになった漢字練習ノートを見せながら、
その熱い想いを語ってくれたのを覚えています。

(写真:アジアの家の日本語学習者にも
 人気のスペイン語で日本語を教えるYouTube番組「YUYU NIHONGO」
 登録者数からしてもスペイン語圏の日本語学習者が
 相当利用しているのではないかと思われます
 https://www.youtube.com/c/YUYUNIHONGO

そんなダリオさんが、
私や身近にいる数少ない日本人に
自らの『漢字ネタ帳』を披露するだけでは物足りなくなり、
漢字クラスを立ち上げたのです。

最初、ダリオさんから
「先生、私は皆に漢字を教えるという方法をクラスで使っても良いですか?」
と、打診があったので
授業の終わりに「試しにどうぞ」とやらせたら、
話が止まらなくなってしましました。

漢字はおろか文字にも全く興味のない生徒は
「はあ~?!」となってしまい、
慌ててストップをかけ
「次週からは授業の前に時間をあげるから、
 漢字に興味がある人に参加してもらいましょう」ということに。

こうして1ヶ月前にダリオさんの漢字クラスがスタートしました。

(写真:こちらはダリオさんが利用している
 漢字の辞書サイトhttps://japonesbasico.com/kanji/

もちろん他にもアジアの家の学習者で、
漢字好きがいるのは知っていました。
小学生レベルの漢字は普通に読み書きできる人、
自称文学研究者で日本文学にも興味を持ち
日本語を学問の対象として勉強したい人、
これから奨学金をもらって日本へ行きたい学生、
日本語に関係することならなんでもやりたい人、
全然漢字は知らないけどこれから勉強したい人などなど。

ダリオさんのクラスの生徒達は漢字に対するアプローチの方法も、
実力レベルも様々ですがしっかりクラスは成立しています。

私も時々チャチャを入れながらできる限り同席して見守っていますが、
高校を卒業したばかりでもちろん
教授経験もないダリオさんの授業がうまいことに驚いてしまいました。

(写真:挨拶・・・日本人も書けないって!)

自分の漢字学習経験をうまく取り入れながら、
こんなにも漢字って面白いんだよ~というのを全力で伝えようとします。
多くのキューバ人がそうですが、
根っから話上手で、相手の様子をみて
突っ込んだり突っ込ませてみたりの掛け合いも絶妙、
飽きさせない授業は実に素晴らしく舌を巻くほどです。

そして、何より漢字に関する知識、
特にその成り立ちや起源、
つくりについてよく知っていることったら・・・

完敗です、ダリオ先生!!

また素晴らしいのは、
クラスメートが教えているということに何の抵抗もなく、
しっかり学ぶ姿勢である「生徒」たち。

中途半端な先生は舐められることもあるけど、
豊富な知識に裏付けされた説得力のある授業は
生徒にもちゃんと受け入れられるということを証明しています。

上下関係や差別のないキューバ社会のなかで、
教師と生徒を意識することなく
共に学ぶことを自然に心得ている彼らを見て
感心するしかありません。

(写真:楽しく日本語、楽しく漢字、何よりです!)

ダリオ先生の漢字クラス、
ネタは無限にあるだろうからこれからも半永久に続けてもらいましょ。