難聴への理解を促すアニメ動画「♪なんちょうなんなん」/発音のしくみや工夫を考えるきっかけに

山田です。
Eテレの番組「ろうを生きる 難聴を生きる」のサイトで、
「アニメが伝える難聴のこと」という記事を読みました。
https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/rounan/1970/

その中で「♪なんちょうなんなん」という動画が紹介されていました。
難聴への理解を促すためのもので、
難聴の人にとって、こんなことが難しい、
でも、みんながこうしてくれるといいなということを、
アニメと歌で紹介している動画です。

動画は「難聴の子を持つ家族会そらいろ」の
公式サイトをご覧ください。
歌詞のPDFもダウンロードできます。
https://sorairofukuoka.jimdofree.com

歌詞の中には、
「インコをリンゴに ききまちがえた」
「くちのうごきは おなじです」とあります。

難聴の方は、補聴器だけでなく、
唇の動くを見て何と言っているかを読み取る「読唇」も
聴く手がかりとして活用するそうですが、
「インコ」と「リンゴ」の発音は、口の「中」の舌の動きや、
喉の「奥」の声帯が震えるタイミングは微妙に違います。
「外」からは見えないので、口の動くはほぼ同じで、
読唇だけでは区別がつかないというわけです。

私は、日本語教師になる人のための講座で、
発音のしくみについても教えているのですが、
その中で、ある外国語の母語話者にとって
日本語のどの発音が聞き取りにくいのかということにも触れています。
「大学(だいがく)」と「退学(たいがく)」「体格(たいかく)」は、
中国語や韓国語の母語話者には、発音の区別が難しいものです。
これは、喉の奥の声帯が震えるタイミングのごく僅かな違いなので、
口の外から見えるものではなく、難聴の方にも難しいはずです。

まずは、難しいと感じる人がいることを知り、
そのしくみを知り、様々な手段を併用することで、
伝える工夫をしていけたら、いいですね。

私は講座の仕事で、
受講生に聞こえない方がいたことをきっかけに、
話す内容をなるべくスライドで文字や図にすることを
心がけるようになりました。
文の構造も簡単なものにし、述語を省略しないようにしました。
その結果として、外国人の受講者にも、健聴の日本語母語話者にも
伝わりやすい授業にすることができました。

でも、動画「♪なんちょうなんなん」にもあったのですが、
複数の人で集まって話す場、講座でいえばグループワークでは、
普通にやってしまうと、いま誰が発言しているのかがわかりにくく、
あちこちから意見が出ると、発話が重なったり、目まぐるしく話し手が変わるので、
聞き取れないし読唇もできないという点で難聴者には難しいです。
参加者ひとりひとりの配慮が必要で、
それを「当たり前」にしていく難しさを感じました。
模造紙と付せんを使った話の可視化はスピードという点で難ありです。
負担の少ない工夫をまだまだ考え中です。