山田です。
これまで、音声学カードゲーム「ɯɲo(ウニョ)」は、
日本語の発音で使われるIPAのうちの、
まず優先的に覚えるべきものだけを選んだ
「スタンダード版」しかなかったのですが、
この度、その他のIPAを加えた「エクストラ版」を作りました。
下のシートをクリックするとPDF(47KB)が開きます。
カラー印刷して切ってご利用ください。
これはスタンダード版と合わせて使うものなので、
お持ちでない場合は、まずスタンダード版を印刷してください。
こちらのページにあります。
http://tbkdonguri.wp.xdomain.jp/2019/07/09/2271
▼追加したIPA
実はスタンダード版を作った頃(2019年7月)に、
既にエクストラ版はほとんどできていたのですが、
IPAの選定でずっと迷っていました(そして、すっかり忘れていました)。
悩んだ末に、エクストラ版で選んだのは、以下の19の音です。
- 接近音:[ j ] [ w ]
- ハ行音として相補分布する摩擦音:[ h ] [ ç ] [ ɸ ]
- 調音点が口腔の奥の方の鼻音:[ ŋ ] [ ɴ ]
- 硬口蓋化した軟口蓋破裂音:[ kʲ ] [ ɡʲ ]
- 英語の発音で使われる音
:[ l ] [ ɹ ] [ f ] [ v ] [ θ ] [ ð ] [ ʃ ] [ ʒ ] [ tʃ ] [ dʒ ]
英語の発音で使われるIPAも少し加えてあります。
日本語教育能力検定試験でときどき出題されるので、
覚えておくといいでしょう。
日本語と似た音もありますが、
調音点などは微妙に違うので楕円の色は別にしました。
[ t ]などのように、日本語と英語の発音で
同じ記号を使うものもありますが、
実際には調音点やVOT(有声開始時間)に違いがあります。
ご注意ください。
▼ワ行子音をどう表すか
ワ行子音をIPAでどう表示するべきかは、迷いました。
一般的には、[w]でいいのですが、
日本語のワ行子音は本来の記号[w]ほど両唇を丸めないので、
弱い円唇化を表す補助記号を付けてみました。
調音点が2箇所なので調音点を表すリングは二重にしてあります。
ちなみに、ワ行子音に対して
軟口蓋接近音の記号[ɰ]を使うこともあるようですが、
それだと両唇を全く使わないように思われてしまうので、
使用しないことにしました。
▼実際に遊んでみる
スタンダード版と合わせてカードは全40枚になるので、
4人で遊ぶときは10枚ずつ、
5人なら8枚ずつ、
6人なら英語のIPA等を4枚抜いてから6枚ずつ配ってください。
スタンダード版のみと比べると、
最初の手持ちのカードが増えるので、
パスすることなく、じっくりカードを選びながら楽しむことができ、
ゲームバランスは向上すると思います。
しかし、他と繋がりが少ないカードも増えているので、
ワイルドカードの使い方がより重要になってきます。
というわけで、エクストラ版にもワイルドカードを1枚付けて、
計2枚にしてあります。
▼仲間はずれ問題
例年の日本語教育能力検定試験の試験Ⅰ問題1(1)は、
5つのIPAのうち、調音点、調音法のいずれかの観点で
他と異なるIPAを1つ選ぶ問題になっています。
[ɯɲo]カードを使えば、こういった問題を簡単に作ることができます。
エクストラ版を加えた全37のIPAを使用すると、難易度が増しますよ。
▼カード教材の作り方
[ɯɲo]のようなカード教材は、
MacのKeynoteとPagesを連携させると簡単に作れます。
皆さんも自分のアイデアで様々な教材を作ってみてください。